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2026.08.16 素材・仕上げ

チタン研磨とは?
特性・工法・焼け対策を神奈川県川崎市の職人が解説

執筆:マーケティング担当 松本(株式会社松本研磨工業)

チタンは軽量かつ高強度、耐食性にも優れることから、航空機部品・医療機器・眼鏡フレーム・ゴルフクラブ・時計など幅広い分野で使われる素材です。しかし研磨の現場では「硬くて削りにくい」「熱がこもって焼け色が出やすい」というチタン特有の難しさがあります。本記事では、神奈川県川崎市で1967年から研磨一筋の松本研磨工業が、チタン研磨の目的・工法・番手の選び方・焼け対策まで、現場目線でわかりやすく解説します。

チタンの特性と研磨の難しさ

チタンは比重4.5(鉄の約6割)と軽量ながら、強度・耐食性に優れる素材です。一方、研磨においては他の金属にはない固有の課題があります。

硬く、加工硬化しやすい

チタンは研磨中に表面が硬化する「加工硬化」を起こしやすく、削れにくくなると同時に工具や研磨材の摩耗も早まります。ステンレスよりも切削抵抗が大きく、粗研磨の段階から時間がかかる素材です。

熱伝導率が低く、焼けが出やすい

チタンの熱伝導率は鉄の約1/6と低いため、研磨時に発生した摩擦熱が逃げにくく、表面温度が急上昇します。その結果、酸化皮膜が急速に成長し、黄・紫・青といった干渉色の焼け(テンパーカラー)が現れやすくなります。

鉄粉が付着すると腐食の原因になる

チタン自体の耐食性は高いのですが、研磨に使った工具やバフに鉄・ステンレスの微粒子が残っていると、チタン表面に付着して「もらいサビ」や変色を引き起こします。工程・治具の管理が仕上がりを左右します。

チタン研磨で多いトラブルは「焼け色が入って再研磨になる」「他の金属と共用したバフでサビが移る」の2つです。専用の治具・バフ・研磨材を用意し、加工速度を抑えることがトラブル防止の基本です。

チタン研磨の目的

チタン研磨は目的によって求める仕上げグレードが大きく異なります。主な目的を整理します。

目的仕上げグレード代表的な用途
鏡面仕上げ・光沢出しRa 0.05〜0.2μmアクセサリー・時計・スポーツ用品
ヘアライン仕上げRa 0.4〜1.6μm眼鏡フレーム・建材・医療機器筐体
溶接跡・バリの除去Ra 0.8〜3.2μm航空部品・産業機械部品
表面均一化(酸化被膜の除去)Ra 0.4〜1.6μm医療機器・精密部品の下地処理

チタン研磨の工法

チタンの研磨には複数の工法があり、目的・形状・求める仕上がりによって使い分けます。

バフ研磨

布製・不織布製のバフホイールに研磨剤(コンパウンド)を塗布して磨く工法で、鏡面や高光沢仕上げに最も適しています。チタンは熱がこもりやすいため、低速回転・軽い圧力での作業が基本です。バフ研磨の詳細はこちらをご覧ください。

ベルト研磨

研磨ベルトを使った工法で、溶接跡の除去・面均しに向いています。チタン専用、もしくは他素材に未使用のベルトを使うことで、鉄粉混入によるもらいサビを防ぎます。ベルト研磨の詳細はこちらをご覧ください。

フレキシブル研磨(フレキ研磨)

弾性砥石や研磨フィルムを用いて曲面・複雑形状に追従する工法です。眼鏡フレームやゴルフクラブヘッドなど、局面が多いチタン製品の仕上げに有効です。フレキ研磨の詳細はこちらをご覧ください。

工法向いている用途Ra目安チタン特有の注意点
バフ研磨鏡面・光沢仕上げRa 0.05〜0.4μm低速回転で焼けを防ぐ
ベルト研磨溶接跡除去・粗取りRa 0.8〜3.2μm専用ベルトで鉄粉混入を防止
フレキ研磨曲面・複雑形状Ra 0.4〜1.6μm加工熱に注意し速度を抑える

番手(砥粒粒度)の選び方

チタン研磨では、加工硬化を避けるために番手の選定と工程の組み方が特に重要です。基本的な考え方は「粗い番手で傷・バリ・素地を整え、細かい番手で順番に仕上げる」ですが、チタンは削れにくいため各工程での送り速度・圧力の管理が仕上がりを左右します。

工程番手の目安目的
粗取り#80〜#150バリ・溶接跡・素地の荒れを除去
中仕上げ#240〜#400粗取り傷を消し、表面を均一化
仕上げ#600〜#800ヘアライン仕上げ・鏡面前の下地
鏡面仕上げコンパウンド(バフ)鏡面・Ra 0.1μm以下
チタンは番手を飛ばすと加工硬化した層が残りやすく、後工程での研磨効率がさらに落ちるという悪循環に陥ります。焦らず工程を踏むことが、結果的に最短ルートになります。

焼け(テンパーカラー)と鉄粉混入への対策

チタン研磨特有の2大トラブルである「焼け」と「鉄粉混入(もらいサビ)」は、いずれも工程・治具の管理で防げます。

焼けを防ぐ加工条件

  • 回転数・送り速度を抑える:熱伝導率の低さを前提に、他の金属より控えめな条件で加工します。
  • こまめに冷却する:連続加工を避け、表面温度が上がりすぎないよう休ませながら作業します。
  • 圧力を一定に保つ:局所的に強い圧力がかかると、そこだけ熱がこもり焼けが発生します。

鉄粉混入を防ぐ治具・工程管理

  • 専用の研磨材・バフを用意する:鉄・ステンレスに使用したものとは完全に分けて管理します。
  • 作業台・治具の清掃:他素材の加工粉が残っていないか、工程間で確認します。
  • 研磨後の洗浄:表面に付着した微粒子を除去し、変色・腐食のリスクを下げます。
医療機器・航空部品などチタンの耐食性・生体適合性が重視される用途では、鉄粉混入の管理が特に重要です。用途をお伝えいただければ、工程・治具の管理レベルも含めてご提案します。

まとめ

チタン研磨は「加工硬化しやすい」「熱がこもって焼けが出やすい」「鉄粉混入でもらいサビが起きる」という3つの特性を理解した上で、加工条件・番手・治具管理を適切に行うことが品質の鍵です。特に焼け対策では、回転数・送り速度を抑えてこまめに冷却することが仕上がりに直結します。

工法は目的に応じて、バフ研磨(鏡面・光沢)・ベルト研磨(溶接跡・粗取り)・フレキ研磨(曲面・複雑形状)を組み合わせるのが基本です。

「試作品でチタンの仕上がりを確認したい」「1個からチタンの研磨を依頼したい」という場合は、神奈川県川崎市で1967年創業の松本研磨工業にご相談ください。図面がなくても、現物・写真をもとに用途・要求Ra値に合った工程をご提案します。

よくある質問

Q. チタンを研磨すると青や紫に変色するのはなぜですか?

チタンは熱伝導率が低く、研磨時の摩擦熱が逃げにくいため表面に酸化皮膜が急速に成長し、干渉色として黄・紫・青などの焼け色(テンパーカラー)が現れます。回転数・送り速度を抑え、こまめに冷却することで防げます。

Q. チタンの研磨に鉄用の研磨材を使ってはいけないのですか?

鉄・ステンレスに使用した研磨材やバフを使い回すと、微量の鉄粉がチタン表面に付着し、サビ(もらいサビ)や変色の原因になります。チタン専用、または未使用の研磨材・バフを使うことが推奨されます。