研磨の仕様書や図面に「Ra0.8」「Rz3.2」などの記号が出てきても、何を意味するのかわからない——そういった声をよくいただきます。本記事では、川崎で創業58年の金属研磨工場として現場で培ってきた知識をもとに、表面粗さの基礎であるRa・Rz・Rmaxの定義・違い・読み方、そして研磨工法ごとの達成値の目安をわかりやすく解説します。
表面粗さとは
表面粗さとは、金属などの表面にある微細な凹凸(うねり・傷・加工跡など)を数値化した指標です。肉眼では「なめらか」に見える金属面でも、顕微鏡レベルでは無数の山と谷があり、この凹凸の大きさが表面粗さとして測定されます。
表面粗さは研磨・切削・鋳造・板金など、あらゆる金属加工の品質指標として使われています。特に研磨では、「どれだけ滑らかに仕上げられているか」を客観的に示す数値として、図面・仕様書・検査基準に広く記載されます。
Raとは(算術平均粗さ)
Ra(Roughness average)は「算術平均粗さ」とも呼ばれ、現在最も広く使われている表面粗さの指標です。JIS B 0601で定義されており、国際規格(ISO 4287)とも対応しています。
定義:基準長さ内の粗さ曲線の絶対値を平均した値。単位はμm(マイクロメートル)。山の高さと谷の深さをすべて平均化するため、表面全体の粗さ傾向を安定して把握できます。
計算方法:基準長さl内の粗さ曲線 z(x) に対して、Ra = (1/l) × ∫|z(x)|dx で算出されます。
用途:機械部品の摩耗・摩擦特性の管理、研磨品質の検査基準、図面への表面粗さ指定など、幅広い場面で使われています。「Ra0.8以下」「Ra1.6」のような形で図面に記載されます。
Rzとは(最大高さ粗さ)
Rz(最大高さ粗さ)は、基準長さ内で最も高い山頂と最も深い谷底の差(高さ)を示す指標です。JIS B 0601(2001年改正)では、5つの基準長さ区間の最大高さの平均値として定義されています。
定義:基準長さを5区間に分割し、各区間の最大山高さと最大谷深さの和の平均。単位はμm。
RaとRzの違い:Raが表面全体の平均的な粗さを示すのに対し、Rzは「最も大きな凹凸の高さ」に着目した指標です。表面に局所的な深い傷がある場合、Raよりも敏感に変化するため、シール面・摺動面・接触面など、局所的な凹凸が機能に直結する箇所の管理に向いています。
Rmaxとは
Rmax(最大高さ)は、基準長さ内で測定した粗さ曲線の最大山高さと最大谷深さの和を示す指標です。JIS旧規格(JIS B 0601:1994以前)で広く使われていましたが、2001年の改正でJIS B 0601はISO規格に統合され、現在のJIS規格ではRz(最大高さ粗さ)がほぼ同等の概念として使われています。
Rz(JIS旧規格)との関係:旧JISのRz(十点平均粗さ)とRmaxは異なる指標でしたが、現行JISではRz(最大高さ粗さ)が設けられ、旧Rmaxに近い概念になりました。旧JISの十点平均粗さ(旧Rz)は現行JISでは「Rzjis」として区別されます。
- 旧JIS Rmax:基準長さ内の最大山高さ+最大谷深さ(1区間の最大値)
- 現行JIS Rz:5区間の最大高さの平均値(ISO規格に準拠)
- 旧JIS Rz(Rzjis):5区間の十点平均粗さ(現在は補足規格として残存)
Ra・Rz・Rmaxの違いと使い分け
| 指標 | 定義 | 特徴 | 使われる場面 |
|---|---|---|---|
| Ra(算術平均粗さ) | 基準長さ内の凹凸絶対値の平均 | 安定・再現性が高い。最も汎用的 | 研磨品質管理・図面指定・一般機械部品 |
| Rz(最大高さ粗さ) | 5区間の最大山谷高さの平均 | 局所的な傷に敏感 | シール面・摺動面・接触面の管理 |
| Rmax(旧JIS) | 1区間内の最大山高さ+最大谷深さ | 最悪値を示す。保守的な評価に向く | 旧図面・旧仕様書の読み解き |
現在の主流はRaとRzの組み合わせです。一般的な研磨品質管理ではRaを主指標とし、機能上の要求が厳しい箇所にRzを追加指定することが多くなっています。
研磨工法とRa値の目安
研磨工法によって達成できるRa値の範囲が異なります。下記はあくまで目安であり、素材・工具条件・技術者の習熟度によって変わります。
| 研磨工法 | Ra値の目安 | 適した用途 |
|---|---|---|
| ベルト研磨(#80〜#120) | Ra 3.2〜6.3 | 溶接跡除去・粗取り・塗装下地 |
| ベルト研磨(#240〜#320) | Ra 0.8〜1.6 | ヘアライン仕上げ・外装材下地 |
| バフ研磨(荒バフ) | Ra 0.4〜1.6 | 光沢仕上げ・装飾部品 |
| バフ研磨(仕上げバフ) | Ra 0.1〜0.4 | 鏡面仕上げ・食品機器・医療器具 |
| 電解研磨 | Ra 0.05〜0.2 | 医療器具・半導体・食品プラント |
| ラッピング・超精密研磨 | Ra 0.01〜0.1 | 光学部品・精密機械 |
バフ研磨とRa値・鏡面仕上げ・ベルト研磨の各記事もあわせてご覧ください。
まとめ
表面粗さの主な指標であるRa・Rz・Rmaxの違いと使い分けをまとめると以下のとおりです。
- Ra(算術平均粗さ):最も汎用的な指標。図面指定・研磨品質管理の主流。
- Rz(最大高さ粗さ):局所的な傷・凹凸に敏感。シール面・摺動面の管理に向く。
- Rmax(旧JIS):最悪値を示す保守的な指標。現行JISのRzに近い概念。
研磨の仕様を決める際は、まず「どの指標で管理するか」「どのRa値(またはRz値)が必要か」を明確にすることが重要です。図面に記載の指標が旧JIS規格なのか現行JIS規格なのかも確認してください。
研磨工法の選定や表面粗さの達成値についてご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。詳細は金属加工とはもあわせてご覧ください。